「Hilokal」というアプリをご存知でしょうか。(読み方は多分「ハイローカル」)
簡単言えば、語学の学習用の Discord で、さまざまなトピックの色々な部屋があり、そこに自由に出入りして、英語のみならず様々な言語で見知らぬ人たちと会話をする事ができます。
英語を学習中で、もっと会話をする機会を作ってみたいと思っていたので、試しに 100時間ほど使ってみました。
以下、Hilokal の機能や特徴と、使ってみた感想です。
Hilokal の特徴と感想
Hilokal の基本的な機能
さまざまな言語で、さまざまなトピックの部屋がある。
適当に気になる部屋を選んで入り、会話を楽しむ事ができる。
会話に参加せずに、聞くだけの事もできるので、会話に入る勇気が出ないうちは、聞き専に回っていいんじゃないかと思います。
Facebook アカウントでログインできるので、アカウント登録が面倒なら、そっちを使った方がよいかと思います。
日本だと Facebook はおっさん向けの SNSというイメージがあるかもしれませんが、海外の人とやり取りをしたいと思うなら、Facebookアカウントは絶対に持っていたほうがいいです。
Facebookアカウント保有率 90%を超える国も珍しくないですし、「え?Facebookアカウント持ってない人と、どうやって連絡取るの?」という感覚の人も普通にいます。
無料で使える
スタッフが立てた特別な部屋は有料だったり、仲のいいユーザやルームオーナーにコーヒーをご馳走する感覚で投げ銭する事で支払いが発生する事がありますが、基本的に無料で使えます。
3人以上の人との会話の練習ができる
部屋にいる人数が特に決まっているわけではないので、必然的に複数人での会話をする事も多いです。
オンライン英会話をするにしても、language exchange partner(互いの母国語を教えあう関係)にしても、英語を学習すると1対1の会話が基本となり、3人以上の人と会話をする練習する機会は結構少ないので、かなり違った感覚を楽しめます。
1対1で会話をする時と、かなり感触が違うので、その練習になります。
「対等な立場の人」との会話ができる
オンライン英会話だと、「生徒と講師」という関係なので、生徒側は無意識に「こちらはサービスを受ける側であり、講師側は、こちらが理解できるような歩み寄りが必要である」という感覚が働き、講師側は「報酬を受け取ってレッスンを提供している以上、生徒に歩み寄る必要がある」という意識が働く。
コミュニケーションが上手く取れない場合、講師側に協力を依頼して、互いの話が通じるように調整する事は、それほど不自然な行動ではないかと思いますが、このアプリでは、会話をする相手は完全に対等な関係となり、上手くコミュニケーションを取れない相手に気を遣う必要は一切無い。
技量不足が原因で何を言ってる事が分からずに相手をイライラさせてしまっても、こちらが言いいたい事が上手く伝わらなくて相手に余計な苦労をかけてしまっても完全に自己責任となる。
ちなみに、オンライン英会話では、30分のフリートークなら、どんな講師が相手でも持続できるようになっていたのですが、このアプリでは全く上手く行きませんでした。
「よーし!結構英会話スキル上がってきたぜ!」と思っていたのは、「講師と生徒」という、関係性がガードされた状態でのみ有効だったという事に気付かされました。
多分、海外に行ったら絶対にブチ当たっていた壁なので、それを日本にいるうちに体感し、ある程度改善できたのは、いい経験だと思う。
各参加者には、英語力不足の人を助ける義務は無いのですが、別にド素人に厳しい環境ばかり、という事でも無く、優しい人も結構います。
こちらの言いたい事をうまく伝えられず、何となくそれっぽい単語を羅列して文法むちゃくちゃな事を話し、相手が「何言ってんの?」と反応された時、他の人が「彼が言いたい事は、多分こういう事だと思うよ」と助け舟を出してくれた事がありました。
知らない人との会話に入る胆力が養われる
慣れないうちは、部屋に入るのも会話テーブルに入るのも結構勇気が要ります。
アプリを使い始めた当初、聞き専に徹していたら、部屋のオーナーから “Request to speak” が入った時、「おわあああーーー!!何を話せばいいんじゃーー!!」とかなり焦ったが、今では全然平気で部屋に入れるようになりました。
何なら、自分からスピーカーテーブルに突っ込んでいくのも、全く抵抗がなくなりました。
こういった胆力は普通に会話する時にも十分役に立つので、それを養う、いい機会が得られます。
会話中の理不尽を経験できる
部屋のオーナーだった場合、特定のユーザを部屋から追い出す事ができる、「kick」という機能があります。
よほど失礼な事をしない限り追い出されないんじゃないかと思いきや、普通に使っていても、割とカジュアルにキックされます。
例えば、男性の方が立てた部屋に女性が一人だけ入っている状況で参加リクエストを出すと、問答無用でキックされる事があります。
多分、「おいおい。俺が立てた部屋に女の子が入ってきて、二人きりで話してるんだぜ? 邪魔してんじゃねーよ。」という事だと思います。こんな相手の顔も本名も分からないうえ、定期的に話すメンバーを作るには向いてないアプリで何ダサい事してんだよ、と思わなくは無いですが、ルームオーナーの権限でそういった運用をするのはルール上何の問題も無いので、その場合は治安の良い部屋を探しましょう。
あとは、部屋に入ってきて、しばらく聞き専をしていたら理由もわからずキックされる事もありますが、日常茶飯事なので、あまり気にしないで良いかと思います。
他には、”Like u r doing fucking” と書き残して去っていく人がいたり、何だかよく分からない罵倒をして去っていく人も時々います。
印象に残っているのは、部屋に入ってくるなり、いきなり “get lost!” と激しく攻め立てられた事でしょうか。
部屋に入ってきてマジで何も発言しない状態から、それを言われました。
早口でよく聞き取れなかったのですが、多分、僕が日本人である事が、罵倒された原因のようです。
“got lost” が、めちゃめちゃ汚い言葉で罵られている、という事は分かっても、それがどれぐらいのスケールなのかよく分からないので、スペイン在住の友人に聞いてみたところ、
「えええ!!? 海外に住んで 10年以上経ってるけど、一度も言われた事ないよ。」
「ちなみに、会社の上司が、部下にその言葉言ったら、翌日からその上司の席無いと思う。」
というレベルとの事でした。
インド人の友人に話してみたところ、「え?! マジでそんな事言われたんですか!?」という反応だったので、本当にヤヴァイレベルの暴言を吐かれたんじゃないかと思います。
ただ、海外に長期で住んでいても投げかけられる事が無い言葉を聞く事ができたというのは、貴重な経験なんじゃないかと思いました。
とはいえ、そんな人は本当にごく一部で、大半は良識のあるユーザです。
新しい単語や表現は覚えづらい
多人数で会話を進める事がメインとなるため、自分が知らない単語や表現が出てきても、それについて「あ、ごめん。ちょっと待って。よく聞き取れなかったから、もっかい話してくれない?」といった感じで、会話の流れをブッた切る事は非常に難しいです。
そのため、自分の知らない部分を補強する仕組みが無く、自分で推測しながら進めていくしかないので、正しい文法を学びたいという動機の方には全く向きません。
友達はできづらい
ユーザは、大半が本名や自身の写真を使用していません。
アプリの性質としては、「匿名で色々な人と話をしよう!」というコンセプトなのではないかと思います。
プロフィールを全く書いてない人も多いので、相手のことをよく知り、友人のように打ち解け合い、定期的に話すようになるといった人間関係は作りづらいです。
ちなみに、100時間使用しても、互いを認知して定期的に話しているユーザは 5人も居ないです。
ただ、これは別に欠点というわけではなく、「匿名で、色々な人と、その場限りの適当な話をしたい。」というスタンスが好きな方にとってはとても相性がよいアプリだと思います。
部屋名は、ほぼ飾り
色々な名前の部屋があり、様々なテーマで会話が楽しめるかと思いきや、ほとんどの部屋で、部屋名はただの飾りです。
実際は、ほぼ全ての部屋でフリートークが展開されます。
公式が立てたページは異なりますが、一部の例外を除いてそんな感じです。
なので、部屋名は一切気にせずに入室するのが正しい使い方となります。
試しに、自分でも、こんな感じの部屋を立ててみました。
・Let’s practice for IELTS
・Let’s talk about crypto currency.
・For IT engineer : What is your main programming language
・For IT engineer : What is your favorite frontend framework
・For IT engineer : What is your favorite PHP framework
が、”crypto currency” というタイトルの部屋には、仮想通貨に興味もない人は普通に入ってきますし、”For IT engineer” というタイトルの部屋に、コンピュータに興味がない人も普通に入ってきたりします。
例えば、”Let’s talk about crypto currency” というタイトルの部屋に、インド在住の牧場主の方が入ってきて、仮想通貨とは一切関係ない話を2時間ぐらいやってました。
「仮想通貨興味あるの?」と聞いたところ、「いや、全然。部屋立ててる人が日本人だったから入ってきた。」とか、そんな感じでした。
何が何でも、そのトピックについて話したくて部屋立てたなら kick してもいいのかもしれませんが、アプリ全体がそんな雰囲気なので、文化として受け入れた方がいいんじゃないかと思います。
というか農場経営してて、象も飼ってるとか言ってたら、そっちの方が気になるっちゅーに。
あとは、同じ部屋に入ってきた人が、日本の歴史、特に幕末あたりが好きで、「白虎隊」が好きとの事だったので、「何で戊辰戦争の話題でそっち行くんだよw 素直に新選組行っとけよw」と、新選組を題材にしたおすすめの漫画「ちるらん」を紹介したところ、Listen Only エリアに居た韓国の方から、「ピッコマへのアクセス、ありがとうございます。」と、オープンチャットに日本語でメッセージが投稿されました。(※”Let’s talk about crypto currency” という部屋での会話です)
そんな感じで、ゆるく使っていけばいいんじゃないかと思います。
レベルは超適当
それぞれの部屋には、Beginner、Elementary、Intermediate・・・といった感じで、英語レベルごとにラベルが付けられているのですが、マジで全く意味がありません。
Beginner のラベルがついた部屋でも Intermediate レベルの会話がガンガン展開されますし、Advance や Proficient の部屋でも、そこまで高度なレベルが求められない会話をしてたりします。
多分、部屋を立てる時、あんまりに気にしない人が多いんだと思います。
なので、「Beginnerの部屋の会話なのに、全然理解できなかった・・・」と凹む必要は無いし、「Advance の部屋しか無いな。Beginner向けの部屋は無いかな」と探す必要もありません。
英語の部屋でも、別の言語で話している事がある
英語の部屋に入ったにも関わらず、全然別の言語で会話をしている事があります。
(多分、ヒンディー語かインドネシア語のパターンが多いんじゃないかと思う)
部屋を立てた人の母国語がヒンディー語で、入ってきた人の母国語もヒンディー語だった、といった場合、互いの母国語を交えながら話したり、下手をするとヒンディー語オンリーで会話して、身内ネタで盛り上がってこちらは置いてけぼり、というケースもままあります。
そうなってしまった場合は、もう英語の勉強にはならないので、適当な理由をつけて退室しておきましょう。(別に無言で退室してもいい気がしますが、そこは使う人の感覚でどうぞ)
メインのユーザ層は 10代後半の学生~20代前半(多分)
匿名性の高いアプリのため互いの素性についての話題になる事はそこまで多くは無いのですが、それでも年齢や職業の話が上がる事はあります。
体感的に、ユーザ層は 10代後半の学生~20代前半が多い印象です。
なので、相手の事を聞くときは “What’s your job?” よりも、”Do you work or are you a student?” と聞くのがベターです。
“What do you do?” でもいいと思いますが、英語にあまり慣れていない人や、文化・地域によっては意図が伝わりにくいことがあるので、「職業」や「学生」にフォーカスした聞き方の方が伝わりやすいです。
その他の使い方
日本語学習者向けの部屋もあるので試しに入室してみると、「何でこんなに日本語上手いの?」とびっくりするレベルの方々がゴロゴロしています。
入室すると、「おお!日本人が来た!」と、歓迎してくれたので、色々と日本の事を話す事が出来ました。
たまに出入りするうちに、日本語を学習中の人たちを相手に、何やら愚痴のような事を延々と話し続ける日本人の方と同席する事がありました。
要約すると、だいたいこんな感じでした。
・英語を勉強しているけど、全く上達しない
・”Beginner” の部屋があっても、何話しているのかさっぱり分からない。こっちが想定している Beginner は、赤ちゃんレベル。向こうが想定しているのは、恐らく高校生レベル。
・何だかもう英語学習が面倒くさい。いっそのこと、言語の壁を取り払って、テレパシーで会話できるようになれるといいよね。(何だかスピチュアルな雰囲気の画像をシェアしながら)
正直、「勉強し続けて日本人と遜色ないレベルで会話している外国人相手に、何で飲み屋の店主にでも愚痴るような事を延々と話しているんだ。この人は? うだうだ言ってないで英語の勉強しとけばいいのに」と思いつつも、変に空気を乱すつもりもないので、そのまま聞いていました。
後日、スペイン在住の友人にその事を話してみると
「多分、勢いで海外行ってみたけど、全然言葉が通じないし、語学力も上がらないから、ナーバスになってるんだと思うよ。そんで、当初の目標見失ってたりとか。オーストラリアに住んでる頃、そんな感じで人生の迷子になっている人、結構いたよ。優しい目で見てあげて。」
との事でした。
そんな感じで、「海外に行ったけど、意思の疎通ができないのが想像以上に辛い!誰でもいいから、日本語で話したい!」とストレスが溜まった時の心のケアに使うのもいいかもしれません。
日本にいるうちにやっておいた方がいいと思った事
日本人ユーザはかなり少なく、日本人という事だけで珍しがられる事は結構あります。
日本のアニメが好きな方は結構多く、部屋に入るとアニメの話を振られる事があるので、アニメは見ておいた方がいいです。
「いや、別にアニメ好きじゃねーし。」といった愛好の話ではなく、「世界的に評価の高い自国の誇れる文化には、触れておいた方がいい」という話です。
別に日本の歴史とか寺とか興味なくても、京都や奈良に行く事はあるかと思いますが、そんな感じでいいです。
もはやアニメはワールドワイドで愛される文化になっています。楽しんでおいて損は無いです。
英語を学習してて常々思いますが、海外の人と話したいなら、日本の事を勉強する事、日本の事を英語で説明できるように練習しておく事は、メチャメチャ重要です。
「自国に、世界に誇れる文化がある」という事は、海外の人と話す上では大きなアドバンテージとなります。
海外の人と話していく中で、日本の偉大なクリエイター達が世に送り出した作品が世界中で評価されている様子を目の当たりにし、日本の事を好きになり、日本の事を話せるようになっておいてください。
お勧めとかは特に挙げません。Netflix や Amazon Prime あたりでも契約して、気になった作品を見てみてください。
あとは、「日本のドラマが好き」という人もちょくちょく見かけます。
ドラマについては、「今際の国のアリス(英題:Alice in Borderland)」を見ておいてください。
アニメについては本当に色々な作品が話題に挙がりますが、日本のドラマが好きと言う人と話すと、ほぼ確実にこの作品が出てきます。
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