スペイン在住の日本人に聞いた、ヨーロッパの就業事情と、ビザ取得に苦労したという話と、女性なら有利に働くケースもあるという話

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「海外移住で、キラキラな生活を!」
みたいなサイトでは、ほとんど触れる事は無いが、海外で仕事をするにあたっては超重要なビザの話。
プラスαとして、スペイン就労事情についての話。

ビザの取得には、結構大変になるケースも多いそうです。

スペイン在住の友人(フロントエンドエンジニア兼デザイナー)も、ビザの取得には苦労されたようで、色々と参考になる部分があったので、ブログエントリにしてみました。(本人、了承済み)

ここで言う「ビザ」は「就労ビザ」のことで、「ウチの国で働くためには、この書類が必要ですよ」という、労働者の身元を保証してくれる証明書のことです。
就労ビザは、雇用する会社が発行してくれて、発行条件は国によってまちまち。
なので、「海外で働きたい!」と思い立った場合、まずは、その国のビザ発行条件を調べる事になります。
当然、国によって難度はバラバラです。というか、時期によっても難度が変わります。

イギリスの EU離脱と、その影響

ビザの話をする前に、EU 圏内で仕事をする事について。

イギリスが EUを離脱して話題になりましたが、結局のところ、それがどう影響しているのか、さっぱり分かりませんでした。
(そもそも、日本ではヨーロッパの報道そのものが多くない)

という事で聞いてみたところ、色々と面白い事が分かりました。

トータル的に見て、どうなの?

イギリス国内ではどのように報道されているのかは詳しく調べていませんが、「デメリットの方が大きく、イギリスの産業は厳しい状況になるのでは?」という見方が主流のようです。

以下、EU離脱の影響について。

生産・販売の制限がかからなくなる

EU には、農産物に耕地面積や生産量に制限があり、そのルールを無視して生産や販売をする事はできないようで、国内で捌く時にも、このルールが適用されるそうです。

EU の基本思想として、「全ての国が勝者となるような共同体」という考えがあるようで、「1つの国が、圧倒的な勝者とならないように調整する」というベクトルが働くのだそうな。

EU を離脱する事で、生産量と販売量に制限が掛からなくなって、売り放題・・・かと思いきや、EU 圏外から輸入して物を売る時は大きな関税がかけられるので、イギリス生産の農産物は EU 圏内では売れにくくなり、結果、売り上げが減少する事が予想されるとのこと。
(売上の大部分は EU 圏内から)

なので、販路を EU 圏外にも伸ばし、そちらをメインルートにする必要があるかと思いますが、うまく行っているかどうかは、ちゃんと調べてません。
ネタがたまったら、何か書いてみたいと思います。

ユーロが使えなくなる

EU 圏内では、世界的に見て安定した価値のある通貨「ユーロ」が使えますが、離脱すると当然使えなくなります。
が、イギリスの「ポンド」も信頼のある通貨なので、それほどデメリットにならないのでは? という見方もあるようですが、共通の通貨で物が買えないという煩わしさが出てしまうため、売上には影響するようです。

そりゃ、「この商品は日本円で買えません。ポンドに交換してから買ってください」となったら、よっぽどオンリーワンな商品でなければ、別のところで買うよね。という話。

ビザが必要になる。(労働環境に影響が出る)

EU圏内同士の国の人が仕事をする場合、ビザは不要らしい。(例えば、イタリアの人がスペインで働く時、ビザ不要で就労できる)

が、EUを離脱すると、その権利が使えない。
なので、イギリス人を雇用していた会社は、ビザを発行する必要に迫られ、いくつもの会社がてんやわんやになったらしい。

ビザ発行のためには1度本国に帰らないといけないばかりか、事務手続きも非常に面倒なため、
「ビザ発行の事務手続きのコストを考えるなら、別の人を入れた方がええわ」という発想になったり、そもそも会社がビザを発行できなかったりで、ヨーロッパで失職するイギリス人は珍しくなかったそうな。
(「会社がビザを発行できない」というケースの詳細については後述)

スペインでのビザ取得事情について

というわけで、ようやくビザの話。

まず、ビザ(就労ビザ)は、雇用する会社が発行してくれます。

なので、海外で就労するには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 労働者側が、ビザを発行してまで雇用する価値のある人であること
  2. ビザを発行する会社の経営基盤がしっかりしている事

まず、「1.労働者側が、ビザを発行してまで雇用する価値のある人であること」について。

ビザは基本1年更新で、一番安いビザでも約3万円。
数年経過で不要となるものの、事務作業が軽減されるわけではないので、そのコストを支払ってまで雇用される価値のある人間である事を証明する必要がある。

同程度の能力を持つ人が、国内もしくは EUに居た場合、当然そちらの方が採用される。

また、EUには、失業者リストのようなものがあり、企業の採用担当はそれを参照できるようになっているらしい。
そのため、海外の人を採用する場合、「なぜ、そのリストの中から選ばなかったのか」という事を説明する必要がある。

その中で、観光業とIT関係は比較的それを提示しやすいらしい。
例えば観光業であれば、「企業戦略として、ネイティブレベルで日本語ができる人が必要です。このリストの中には、そのレベルの人はいないので、彼(または彼女)を採用する十分な理由があります」といった感じ。

IT系であれば、言語やフレームワークがそれに相当する。
「Laravel や React といったメジャーな技術が使える人なんて、どこにでもいるのでは?」と思ったが、それでも企業が要求するレベルを満たす人がリストの中にいるとは限らないので、それが障害になる事は、ほとんど無いらしい。

そして、「2.ビザを発行する会社の経営基盤がしっかりしている事」について。

ビザを発行する時、企業が行政の機関に資料を提出する必要がある。
この時、雇用される人のみでなく、ビザを発行する会社も審査の対象となる。

どういう事かと言うと、国外の人に来てもらって就労してもらう以上、「その会社は、労働者に給与を支払い続ける事ができるのか」と言う事が、国からチェックされる。

審査対象となるのは、会社の規模や収支。
借金があるなら返済プランも併せて必要になったりと、結構色々な資料を作らなければいけないそうな。

この時、スタートアップ系の企業は、ほとんど全滅するらしい。
スタートアップ企業は、最初の1~2年は赤字を垂れ流し、3年目から売り上げを伸ばして黒字化させる、といったプランを取る事があるが、当然、不確定要素が多いため経営基盤が盤石とは言いがたく、計画書に楽観的な見通しが含まれる事も多いので、審査は厳しいものとなる。
結果、労働者側には問題がないものの、企業側が審査に引っかかり、ビザが発行されない、といったケースがあるらしい。

ただ、これには例外がある。
1つは、親会社があり、親会社の経営基盤がしっかりしている事。
もう1つは、その会社の事業が、国から支援を受けている事。

このどちらかを満たしている場合、経営基盤が安定しないスタートアップ企業でも、無事審査が通る可能性は高いらしい。
友人の勤める企業は、2つとも満たしていたため、企業側が問題となる事はなかったそうな。
ただ、現在のルールでは、スタートアップ企業は採用面で非常に不利になってしまうため、ビザを緩和するべきでは? という議論が、現在も進められてるようです。

ビザが発行されなかった場合

ビザが発行されなかったとしても、諦めるにはまだ早い。
というか、EUはビザの審査が厳しく、スタートアップ企業の場合、1回でビザが発行されることの方が珍しいらしい。

ビザが発行できなかったとしても、「今回は却下するけど、この問題とこの問題が解決できるなら、降りるかもしれませんよ。」といった事が書かれているそうな。

こういうケースの場合、再度申請を行う事ができる。
この時、自分自身だけで対応するのではなく、専門の弁護士をつけて対応した方がいいらしい。

弁護士は、雇用される側が探すケースと、会社側が探してくれるケースがある。
前者は当然茨の道なので、後者の対応をしてくれる会社を選んだ方が良さそうです。
友人の場合は、後者のパターンでした。

ちなみに、こういった問題(移民・会社)を専門に扱う弁護士がいるらしいです。
そして、直訴先は immigration office(移民局)。

専門の弁護士を立てて再申請したところ、友人の場合、ビザが発行されるまで、1年弱かかったらしい。
思わぬタイムロスになる危険性があるので、準備は入念に。

就労ビザが発行されるまでに使える手段

就労ビザが発行されるまで、早くても1~2ヵ月を要する。

その間、どうやって滞在するのかというと『ブリッジングビザ』で繋ぐ方法と、『no lucrativa visa』で繋ぐ方法がある。

『ブリッジングビザ』は、就労ビザが発行されるまでのビザで、一時的に発行されるもの。
しかし、このビザを保有していても仕事には就けないため、その間は無収入で過ごす事になる。
これが可能かどうかは貯金額と相談しなければならない所なので、金銭的な事情により帰国せざるを得ない状況にならないように準備しておく必要がありそうです。

ただ、法の抜け穴的なポイントがいくつかあるようで、規律がきっかりしている大企業は融通を効かせる事は出来ませんが、そうでない企業の場合(特にスタートアップ系)は、柔軟に対応してくれるケースもあるようです。
(詳しく書いたら変な事になりそうなので、詳細は割愛)

もう1つは『no lucrativa visa』を使う方法。(カタカナで何て書くかは知らない)
これは、「スペインで仕事はしていないけど、日本から仕事をもらって収益が発生していので、生活ができる状態ですよ。」という事を示すビザ。

就労ビザが発行されるまでは日本から取った仕事で食い繋ぎ、就労ビザが発行された時に切り替える。

こういう状況と選択肢がある、という事を考えると、たとえ国外に出るしても、日本から仕事を取って来れるルートを作っておくことは身を助ける事になりそうです。

女性は有利に働くケースがある

ヨーロッパ全体で男女平等を呼びかける声があり、女性が優遇されやすい傾向があるらしい。

女性を採用したり、幹部に昇進させたりすると、国から補助金もでるという事情があるようで、分野や企業によっては、女性の方が昇進しやすく、給与が高くなりやすい傾向があるそうな。

フェミニズムを掲げる政党が、そういった政策を推し進めているのが主な原因とのこと。

それなら、その政党が野党になった場合、政策の効力が失われてしまうのでは? と思ったが、ヨーロッパ全体的に、フェミニズムを推し進める政党でなければ政権を取りづらい世論が出来上がっているので、当分はそういった傾向は続く事が予想される。

そのため、女性であればヨーロッパのIT企業は狙い目らしい。

ただ、根底の考え方として、女性は「優遇してほしい」ではなく、「男性と同様に扱って欲しい」という意思があるようです。

例えば、工事現場などの力仕事も男と同じようにするし、女性である事を理由に仕事量を調整されたり、責任の軽い仕事ばかりを任される事も嫌う。
男性に重い荷物を持たせる事を嫌がる人も多いらしく、「レディーファースト」という言葉は消えつつあるらしい。

話のついでに、千葉県警がご当地VTuberとコラボしてPR動画を作成したところ、日本のフェミニスト議員連盟が、その動画が女性蔑視という理由で抗議して PR動画を削除に追い込んだニュースの事を話してみたところ、「え?この人たち、何でこんな事しているの?」と、まるで理解できない様子でした。(俺も理解できないけど)

向こうの「フェミニズム」は、「男性が許可されている事なら、女性もやっていいはずだ。」といったスタンスで、どちらかといえば行動を起こす側の女性から声を上げるケースが多いようで、特定の団体が独自のルールと基準をもって他者の行動に制限をかける、といった類の活動は、ほとんど見られないらしい。

例えば、「男性はビーチで泳ぐときはトップレスになっている。女性も同じ格好をしていいはずだ」という主張があり、女性がトップレスでビーチを泳いでいても、特に注意される事が無くなっていく、という感じ。
実際、それに賛同する女性は増えているようで、水着売り場も上下セットではなく、分かれて販売するケースが多くなっているらしい。

向こうで言う「フェミニズム」と、日本で目に付きやすい「フェミニズム」には、最早全く別の言葉と考えた方がよさそうなぐらいの大きな意味の違いを感じたので、海外の人と話をする時、「フェミニズムを主張する人って、いい印象無いんだよね。」という話題は避けた方が良さそうです。

日本で悪目立ちしやすい「フェミニズム」に該当する概念は向こうに無いので、「この人は、アンチフェミニズムなのかな。(女性が男性と同等の権利を持つ事を良しとしない、男尊女卑の考えを持つ人なのかな)」と思われる危険性があります。
実際、友人は過去に話した人に対して、そう思ったようです。

というワケで、トップレスの水着に興味のある方は本場のフェミニズムに興味のある方は、一度ヨーロッパのビーチに訪れてみるのはどうでしょう。

実際に就業してくる人について

「海外での仕事をするにあたり、年齢は無関係」という話を聞くが、どうやら本当らしい。

全然違う職種からキャリアチェンジのために大学に入り直す人は大勢いるし、40代、50代でもジュニアレベルで入ってくる人は、別に珍しくも何ともないそうな。

また、向こうは大学をストレートに卒業して就業する人はそれほど多くなく、大学を1度休学して数年間他の国に行ったりして就業する人も多く、IT系はその傾向が特に顕著らしい。
(なので、年齢がさらに意味をなさなくなる)

ただ、ジュニアレベルだと給与が抑えられ、シニアレベルからグッと上がる傾向があるようなので、ある程度経験を積んだのであれば、シニアレベルから狙った方がいいかもしれません。

まとめ

と言う事で、まとめ。

  • ヨーロッパで就業する場合、EU諸国の人が有利なため、彼らを押しのけて採用されるだけの実力が必要となる
  • ビザの手続きは非常に面倒なため、そのコストを支払ってでも採用したいと思わせる必要がある
  • 狙うなら、EU圏外からも積極採用している企業を狙うのが吉
  • スタートアップ系企業は、ビザ発行の観点から狙いづらい。ただし、例外はある。
  • ビザが発行されなかったとしても、諦める必要はない。
  • 海外に出るにしても、日本から仕事を取るルートを確保しておいた方がいい。
  • 女性であれば、ヨーロッパの企業は狙い目
  • 年齢を理由に諦める必要はない

友人とオンライン飲み会やった時、面白い話題だったので深く突っ込んでブログにしていいか聞いてみたところ、「え?こんな話、公開する価値あるの?」と戸惑った様子でした。

「んなことねーよ!メチャクチャ面白くて、超ためになる有益な話だよ!」という事を証明するべく、今回のエントリにしてみました。

参考になったというコメント頂ければ、それを友人にお伝えしようようかと思います。

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