連日、世間を騒がせているフジテレビの騒動の会見について、大株主の「ダルトン・インベストメンツ」から書簡が届いたとのことです。
フジ・メディアHDに大株主「ダルトン・インベストメンツ」から2度目の書簡「深刻なコーポレートガバナンスの欠陥」
記事中に、こんな事が書かれています。
フジテレビの会見をめぐり、大株主からまた批判の声が上がりました。
(中略)
強い言葉で批判したのは、フジ・メディア・ホールディングスの株式を7%以上保有する「ダルトン・インベストメンツ」。先週に続き、フジ側に2度目の書簡を送りました。
書簡はダルトン・インベストメンツの会社ページにて一般公開されており、全文を読むことができます。
(1通目:2025/1/14 の書簡)
Request for the establishment of a third-party committee and the restoration of confidence
(2通目:2025/1/21 の書簡)
Another call for a genuinely third-party committee and the restoration of confidence
英語の勉強中なので、勉強がてら読んでみる事にしました。
冒頭で紹介した記事では、「大株主からまた批判の声が上がりました。」と、かなりマイルドな表現になっていますが、はっきり言って、原文はそんな生易しいレベルじゃないです。
「こんな文章が公式として送付されて、なおかつ一般公開までされるのか??」と思えるレベルの超絶ブチ切れ怒りモードで、マトモな判断力のある責任者なら、部下が「大株主からこんなの届いたんですけど、どうしましょ?」という連絡が来たら、間違いなく優先事項も緊急度も過去に出したことがないレベルの警鐘を鳴らしながら全タスクをブチ捨てて取り組むと思う。
以下、「どんな内容が、凄まじい怒りを表現していたのか」を書き出しています。
細かいニュアンスまでは分からなかったので、その辺はスペイン在住の友人からアドバイスを頂きました。
書簡の全文を読んでみたい方は、上記リンクから辿ってください。
1通目:2025/1/14 の書簡
「深刻な欠陥」「許されない対応」
..serious flaws in your corporate governance. The lack of consistency and, importantly, transparency in both reporting the facts and the subsequent unforgiveable shortcomings in your response merit serious condemnation…
ガバナンスに「深刻な欠陥(serious flaws)」があると断言し、対応が「許されない(unforgivable)」と非難している。
「視聴者の信頼を損ね、株主価値を毀損する」
…serves not only to undermine viewer trust, but also leads directly to erode shareholder value.
視聴者の信頼を損ねただけでなく、「株主価値を毀損する」と評し、経営陣の行動が会社全体に悪影響を及ぼしていると強く批判している。
「我々はフジメディアのオーナーである」
…we are Fuji Media’s owners.
株主の立場を強調し、まるで親会社が子会社に叱責するような立場を取っている。経営陣に直接圧力をかける意図が現れている。
「大株主として、大激怒している」
As one of your largest shareholders, controlling over 7% of the Company’s stock, we are outraged!
「outraged」という言葉は「激怒」「憤慨」といった意味で、我を見失うほどのブチ切れレベルらしいです。(友人アドバイス)
公式文書に “!” を使う時点で、事態である事は容易に想像できる。
「即時かつ適切な対応が不可欠」
It is imperative that the issue be handled appropriately and promptly and without ambiguity.
「即時(promptly)」「曖昧さなく(without ambiguity)」など、妥協を許さない姿勢を示している。
「全ての役員は責任を負え」
Clarifying what really happened and the actions taken to deal with any revelations will allow all directors take responsibility and instigate appropriate action to help restore public trust.
「すべての役員が責任を負い、社会の信頼を回復するために適切な措置を講じること…」と、ド直球にトップ経営者に向けて責任を取ることを要求している。
「構造的弱点を特定しろ」
Identifying the structural weaknesses of the current corporate governance regime…
「構造的弱点」という表現を使い、(個人の問題ではなく)会社全体の体制に問題があることを指摘し、ただの表面的な修正では済まないと暗に求めている。
「この手紙を公開する」
For the avoidance of doubt, I can confirm that we will be publishing this letter as an open call for action.
この手紙の公開を宣言しており、単なる内部への要求に留まらず、世間を巻き込んでプレッシャーをかける強硬な姿勢を示している。
2通目:2025/1/21 の書簡
「自動車事故も同然」
…nothing less than a virtual car crash
記者会見を「事実上の大事故」と評し、完全に失敗であったことを批判している。
“car crash” という表現が使われているが、ニュアンスとしては、「こんなの、自動車事故も同然じゃねーか!」という事らしい。
「失敗そのもの」
It was an object lesson in how not to handle crises
「危機対応の失敗例そのもの」と評価しています。
“object lesson” は、「失敗の例として教科書に使えるレベル」という意味らしい。
「さらに評判を落とす事になった」
further damaging your already fragile reputation
すでに傷ついた評判をさらに損ねたと断言し、状況の深刻さを強調している。
「真実を意図的に隠蔽している」
…the suspicion of a deliberate cover-up of the truth
第三者委員会のガイドラインが守られておらず、「意図的な真実の隠蔽」だと強く疑念を表明している。
「嘆かわしいほどの秘密主義」
lamentably secretive nature of Fuji Media Holdings Group
フジメディアを「嘆かわしいほど秘密主義的な性質」と断じている。
フォーマルな文書でここまで言うか?というレベルの表現。
「現代社会にふさわしくない慣習」
highlights practices that have no place in modern society
「現代社会にふさわしくない慣習」と評し、経営の時代遅れぶりを非難している。
「株主として、まだ怒っている」
we are still outraged
2通目にも出てくる “outrage”。
全く怒りが収まっていないことを改めて伝えている。
「容認できない損失」
cannot tolerate any further damage to shareholder value
株主価値のさらなる損失は容認できないと、強い不満を明言している。
要求事項の強硬な表現
We demand the following from Fuji Media Holdings and Fuji TV:
要求事項の提示にあたり「demand(要求する)」という表現を使用している。
demand は、かなり強い言い方で、「拒否を許さない命令」に近いらしいです。
通常の要求では、”request” が使われるとの事。
以降の英文は長くなるので省略するが、「お前ら、俺らが1通目で言った事何も分かって無いよな? 分かって無いみたいだからはっきり言ってやるよ。こうしてこうしてこうするんだよ。」と、煽っている意図が感じられます。
「誠実さを問う」
If such a result is not achieved, the AGM will necessarily become a referendum on the competence and honesty of the Board of Directors
「この結果が達成されなければ、株主総会は取締役会の能力と誠実さを問う場になる」と強く警告している。
「ここまでレベルが低いとは思わなかった」
even we have been surprised by the level of our prescience
自分たちの予測の正確さに驚いたと述べ、経営陣の失策を揶揄する皮肉が込められている。
「信頼回復どころか、真逆の結果を生んだ」
Instead of restoring trust… had the diametric opposite effect
信頼回復どころか、真逆の効果を生んだと非難している。
「俺らは、ただ見てるだけじゃねーぞ?」
We are not the only ones watching.
静観するだけでは終わらず、事の顛末を最後まで見届ける意思を伝えている。
おまけ
かなり凄まじい内容です。
恐ろしく強気に出ているので、かなりの大株主かと思い、ちょっと調べてみました。
以下、フジ・メディア・ホールディングスの大株主一覧です。(公式サイトより)
最も株を保有している会社の順位に並べていると思われるリストです。
7% の株を保有しているダルトン・インベストメンツは、3番目に名前が載っていてもよさそうですが、なぜか記載がありませんでした。
「外資系企業は除外されているの?(放送事業者の外資比率は法律で 20%未満と定められているが、フジは 32%と違法状態になっているので、それが一発でバレるような状態にしておきたくなかった?)」のかと思いきや、2.63% 保有している「ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001」、2.32% 保有している「NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST」も共に外資系企業です。
日本に支社があるかどうかを判定材料にしているのかと思いきや、ダルトン・インベストメンツは日本支社もありました。
これは、大株主であるダルトン・インベストメンツに対して、極めて失礼な事をしているのでは?
といった疑念を抱きつつ、事態を静観しておこうかと思います。
おまけ2
中途半端な結末を決して許さない、毅然とした態度。
これは面白い事になるんじゃないのか? と思い、フジ・メディア・ホールディングスの株を購入してみました。(購入日:1月24日)
何やら、株価がジェットコースターのように乱高下し、「あれ?間違って仮想通貨でも買っちゃった?」と思えるようなスリリングな展開が続いております。
無事、株主総会が開催され、その時まで株を保持していたら、是非、質疑応答にてダルトン・インベストメンツがどんな質問を投げかけるかを注目してみたいと思います。
investing.com によると、「強い買い」との事です。
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